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2018年6月15日 (金)

【佐藤優】相互扶助という経済 〜いま生きる「資本論」(20)〜 - 語られる言葉の河へ

 <(承前)
 二番目は、相互扶助。別に金銭を媒介としなくてもいいのです。ソ連時代、物の価格は全てゴスプラン(国家計画委員会)で決めていました。それ以外の値段で売ると、投機行為罪になるんです。投機行為罪はそんなに重くなくて初犯ならば、せいぜい強制労働2年ですみます。
 では、人を雇って、「キャビアは公定価格で1,000円だ。ドルショップだったら5,000円で売っている。中を取って3,000円で外国人に売りさばいてこい。お前には一つ500円ずつやるから」なんてやっていると、これは投機行為罪だけでは済まずに、資本主義幇助罪という大罪になる(会場笑)。山崎豊子さんの『不毛地帯』を読まれた方は、主人公の壹岐正が懲役25年の刑を食わされる、その罪状の中に資本主義幇助罪が入っていたのを覚えているでしょうか。壹岐は「資本主義国家の軍人である私が、国家のために忠誠を尽くし、働いたことが、何故に貴国の国内法である資本主義幇助罪に問われるのか」と抗議しますが、むろん聞き入れてくれません。
 1992年1月、ロシアは物価統制を、基礎食料品のいくつかを除いて、撤廃しました。そうしたら、もうものの一週間で、闇市にしかなかったモノが商店に溢れるようになりました。その代わりロシア人が経験したことのない大インフレーションが起きました。政府の公式統計でその年のインフレーションは2,500%以上です。ですから貯金は完全に意味がなくなった。けれど暴動の一つも起きなかった。飢え死にした人もいなかった。どうして? 相互扶助の伝統があるからです。相互扶助と備蓄のおかげでした。
 これは、ソ連にいた人じゃないと感覚がわからないでしょう。例えば4月の終わりになると、ロシア人はそわそわするんです。11月の初めになると、やはりそわそわする。どうしてかというと、5月1日はメーデーですね。メーデーは事実上、春のお祭りでした。そして11月7日は革命記念日です。そうすると、その前にバナナの特売がありました。値段は安いんです。バナナを売っているとなると、当時のモスクワ市民は職場を放棄してバナナを買いに行きました。いくらでも買いたいのだけれど、争奪戦になるので一人だいたい5キロまでしか売ってもらえません。
 バナナを買ったらどうするかというと、みんな近所に配るのです。そうすると、そのバナナは必ずあとで鶏肉や卵になって返ってくる。ちなみにソ連時代、いちばん安い肉が牛肉、次に安いのが豚肉で、いちばん高いのが鶏肉でした。ブロイラーがなかったですからね。(中略)
 相互扶助の話でしたね。ソビエトシステムが崩壊しても、ロシア社会は崩れなかったのです。急速な資本主義がある部分で進み、オリガルヒと呼ばれる億万長者があれだけ出てきて貧富の差が大きくなっても、ロシアでは暴動も起きないし、べつに飢えるということもない。それはなぜかといったら、互助制度が発達しているからです。>

□佐藤優『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)の「3 カネはいくらでも欲しい」の「贈与と相互扶助の久米島」から一部引用

 【参考】
「【佐藤優】贈与という経済 〜いま生きる「資本論」(19)〜」
「【佐藤優】公務員は労働者階級でも資本家階級でも地主階級でもない 〜いま生きる「資本論」(18)〜」
「【佐藤優】資本主義を土地(環境)が制約する 〜いま生きる「資本論」(17)〜」
「【佐藤優】他人のための使用価値 〜いま生きる「資本論」(16)〜」
「【佐藤優】〈裏のユダヤ教〉カバラ思想の下に埋もれている部分を説明したフロイト 〜いま生きる「資本論」(15)〜」
「【佐藤優】講座派の特徴、「日本の特殊な型」 〜いま生きる「資本論」(13)〜」
「【佐藤優】講座派vs.労農派、内ゲバのロジック 〜いま生きる「資本論」(13)〜」
「【佐藤優】宇野経済学は歴史学、資本主義社会の論理をつかむ 〜いま生きる「資本論」(12)〜」
「【佐藤優】『資本論』の二つの読み方 〜いま生きる「資本論」(11)〜」
「【佐藤優】第一次世界大戦のため日本で『資本論』研究が盛んに 〜いま生きる「資本論」(10)〜」
「【佐藤優】本書は人生が苦しい原因の6割を解明する 〜いま生きる「資本論」(9)〜」
「【佐藤優】宇野経済学の面白さ 〜いま生きる「資本論」(8)〜」
「【佐藤優】自分の周りでできること二つ・補遺 〜いま生きる「資本論」(7)〜」
「【佐藤優】自分の周りでできること二つ 〜いま生きる「資本論」(6)〜」
「【佐藤優】報酬と賃金は違う 〜いま生きる「資本論」(5)〜」
「【佐藤優】剰余価値の作り方:労働時間延長と労働強化 〜いま生きる「資本論」(4)〜」
「【佐藤優】制約条件をわかった上でやる、突き放して見る 〜いま生きる「資本論」(3)〜」
「【佐藤優】アベノミクスとファシズム 〜いま生きる「資本論」(2)〜」
「【佐藤優】親の収入・学歴と、子どもの学力の関係 〜いま生きる「資本論」(1)〜」

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